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勇者が伝説の剣で魔王を倒してから一週間が経って、念願のヒロイン(お姫さま)と一緒に暮らすことになりました。 「ぶちっ…ぶちっ…」 死んだ魚のような眼をした勇者が姫お手製のフランスパンをぶちぶち噛みちぎる。 今日も快晴。 すっかり平和になった街で、子供たちは棒っきれを振り回してちゃんばらごっこをするし、大人は市場や畑でそれはそれはいそがしそうに働いている。姫は城で勇者と暮らすことになってから、この国の、この世界の王女としての仕事をてきぱきとこなしている。 勇者はと言うと、 「ユーシャ、今日は子供たちの社会見学の日ですからいい加減着替えてくださいよー」 「うるさいなぁマホーシ。べつにいいじゃんこのままで」 「ユーシャさん…パジャマはイメージダウンですよ…」 元・お供の魔法士(ネクロマンサー・ツインテ幼女)と騎士(ナイト・ねこ目ポニテ男)の苦労もむなしく、魔王との決選後すぐに引きこもりになってしまった。 冒険の間はあんなに素敵に「俺が世界を救うぜ!」とか厨二病なことを言って世界を飛び回っていたのに。所詮はプログラマーの考えたセリフなのだろう(実際何度となく噛んでいた)。 Tシャツにジャージのお兄さんを誰がよろこんで見に来るだろうか。魔法士と騎士はため息をついて無理矢理勇者を着替えさせ、なんとかそれらしい格好になりました。 「姫、ユーシャのメタモルフォーゼ完了しましたっ」 「…あーやっぱむりぃ。」 勇者は(久し振りに来たのでだれんだれんの)装備から腕をのばし、頬を掻くと、ぺたんとすわりこんだ。 「じゃあこうしましょう。今日がんばれたら明日の社会見学は中止します」 ねこ目がさらににぃっと笑い、ツインテは浮かんだ箒にのってゆらゆら揺れる。 勇者は気だるそうに騎士とちろりと見てから城の外を見遣る。 ―――思えば自分は旅をしすぎた。 若干十六にして数年も旅を続け、気がつけば学校にも満足に行っていない気がする。朝起きたら母親にユニ●ロのタートルネックと竹刀とペットのハムスター(ちょい、と言う)を渡され、半ズボンとサンダルのまま「王城へ向かえ」と言われた時は、正直もうどうしようかと思ったものだった。 「いいですか?ユーシャ」 「いーよ」 遠い目をしながら二つ返事でOKを出した。そうだあの時も。王に姫救出と魔王封印の話を聞いた時もそうだったのだ。 勇者は人の話をきちんと聞かない傾向がある。故に毎度毎度苦労するのはギルドで雇われた仲間たちなのだ。 「姫探しに行ってよ」 「いーよ」 「あと魔王も倒してよ」 「いーよ」 「ちゃんと成し遂げられたら英雄の称号プラス姫と結婚できるよ」 「そっちょくすぎてエロい」 ーーーしまった。さっき適当に返事してしまったけど、つまり「今日は引きこもるな」と言うことではないだろうか。 頭の悪い勇者でもそのくらいはわかる。人の話をきちんと聞かないくせのせいで今日ネコ被りをしないといけないと思うと、それだけでだるい。 観念したのか、勇者は服のしわを伸ばし、姫の隣に行儀よく座った。 「やればできるじゃん」 「そうね、彼上っ面だけはきちんとできる人だから」 「だけとか…しつれいだよひめ」 |